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文書作成日:2017/05/05
相続人に配偶者と障害者がいるとき、配偶者の税額軽減の特例を最大限受けることが相続税の負担を一番減らすことになるのでしょうか?
我が家には、身体に重度の障害(身体障害者1級)を持った長女(52歳)がいます。先日、夫が亡くなったのですが、長女の将来を考え、長女には夫の遺産の大部分を相続させてやりたいと考えています。それについては、他の兄弟も納得してくれています。しかし、相続税の負担もなるべく減らしたいと考えています。そのためには、配偶者である私が法定相続分又は1億6,000万円までを相続し、配偶者の税額軽減の特例を最大限受けるのが一番よい選択なのでしょうか?
配偶者の税額軽減の特例だけにこだわらなくても、障害者控除により全体の納付税額のご負担が軽減される可能性もあります。ご長女様の将来もよく考えながら、様々なご検討をなさることをお勧めします。
配偶者の税額軽減の特例とは、被相続人の配偶者について一定の金額まで相続税が発生しないという特例制度です。これは残された配偶者の生活保障のため、という背景がありますが、相続税の計算においては各相続人の個別事情等に配慮して、この配偶者の税額軽減の特例以外にも、算出相続税額から控除できる税額控除がいくつか設けられています。
その税額控除の中の1つに、「障害者控除」という制度があります。これは、社会的弱者である障害者が相続により財産を取得した場合には、算出相続税額から一定額を差し引くという制度です。 では、障害者控除の適用要件や控除金額などを、具体的にみてみましょう。
○障害者控除を受けられる相続人
○控除額
○障害者の区分
○障害者控除額が引ききれない場合
障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引ききれない場合には、その引ききれない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
この場合の扶養義務者とは、配偶者、直系血族(父母や子、孫)及び兄弟姉妹などをいいます。なお、この扶養義務者とは「同居」や「生計一」である必要はありません。
扶養義務者が2人以上ある場合の、それぞれの控除額は扶養義務者間での協議により自由に配分することができます。
○注意点
障害者控除は、その障害者が何も財産を相続していない場合には控除することができません。また、この場合には他の扶養義務者である相続人からも控除することはできません。
○今回の場合
例えば算出相続税額が上記表であった場合の配偶者の税額軽減と障害者控除の適用額は、それぞれ上記表のとおりです。
お母様が相続された部分は、一定額まで配偶者の税額軽減の適用があり、税負担が軽減されます。また、ご長女様が相続された部分は、ご長女の算出税額から障害者控除(限度額:20万円×(85歳-52歳)=660万円)が控除されます。なお、控除しても控除しきれない障害者控除額があるときは、その控除しきれない金額は上記表のとおり、ご長男様やご次男様の算出税額から控除することができます。
このように、どのような配分にすることが最も相続税の負担が軽減されるかは、ケース・バイ・ケースといえます。相続税の負担だけが全てではありませんので、ご家族皆様の将来を見据えて最もよい選択ができるよう、いろいろな角度から検討されるとよいでしょう。
<根拠条文>相法1の2、1の3、19の4、相令4の4、相基通1の2-1
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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